自分にちょうどよいモノやサービスを探すとき、ネットや本で見つけた情報が実際に役立つかどうか見極めるのは、経験がない分野だと特に難しいですよね。
自分でイチから調べて、試して、時間をかけて自分の使い方に合わせていく過程を踏んで、結局はその経験が大事だからです。
ITの環境づくりも同じで、詳しくない人がいろいろ試してみると、時間もお金も結構かかります。
このブログでは、IT環境をつくっていったり、自宅をリフォームしたりするときに、どうすればうまくいくか、どう工夫していくかについて、私なりの考え方をお話できればと思っています。
今回の記事では、IT環境の構築の大前提で、IT費用の後ろ側にあるものについてお話したいと思います。
当記事では、実際にあった事例紹介を通して、IT関係の費用が高額になりがちな理由をご紹介します。
事例紹介
相談:小規模な事業所で、ファイルサーバを入れ替えたい
次のような「困りごと」があり、見積を依頼しました。
- データを共有するファイルサーバが古くなってきたから入れ替えたい
- セキュリティが不安
- 使い勝手も、良くなってほしい
- 社外からも利用したい
- 設置や設定も現場の人間では難しいのでサポートして欲しい
このとき、どのような提案になるか一度見てみたかったので、費用についても特に指定しなかった、というのが、今回のシナリオです。
提案:業務データを安全に管理するシステム(約150万円)
業者からは、次のようなシステムの提案がありました。見積金額は、約150万円です。
提案内容
- UTM機能をもつストレージで、ウイルス攻撃や不正侵入などの外部脅威への対策が可能な、ファイルサーバー
- インターネット経由で社外から接続可能。また重要データもインターネット経由でバックアップ。
- 24時間監視でリモート対応可能。必要に応じてサービスエンジニアにエスカレーションしオンサイトで対応可能。
この相談・提案は、本当にあった話をもとにしています。
このファイルサーバが必要な事業所は、PC台数が10台程度の、小規模な事業所です。
業者は意図的なのか、相談内容のすり合わせが足りなかったのか、スケールが適切でない、過剰なシステムを提案しました。そして当然、この話は流れました。
業者側は、自社では対応する製品・サービスがないことを伝えるために、採用されるはずのない見積を出したのかもしれません。
次は、この見積が高額になった理由を解説します。
高額となった理由
ここでは、説明しやすくするために、単純化したイラストで説明します。
赤いフキダシが、高額となった理由です。

①UTM対応ネットワークストレージ
どうして高額になるのか
そもそもサーバーは機器自体が高額です。100万円を超えることも珍しくありません。
通常、UPS(無停電電源装置)など周辺機器も必要です。
UTMというインターネット上の脅威への対策機能が組み込まれており、またその機能を維持していくためのバックアップ体制も必要となります。
近年では、インターネット経由で不正にアクセスし、企業の重要データを使えなくするような脅威もあり、実際に、病院がランサムウェアの被害にあい、数日にわたって診察が行えなくなったという事例もあります。そういったスケールの事業を想定した製品だと思われます。
小さなIT環境ではどうするか
今回のケースでは、まず事業規模に対して過剰です。
データのバックアップや、セキュリティ対策は、うまく他の手段でカバーしつつ、数万円のNASを使用することが現実的な選択肢だったと思われます。
②データセンターでの24時間監視
どうして高額になるのか
インターネット経由でのシステム監視、またシステム的な連動をするので、当然そのデータセンター側システムの利用料が発生します。設備と運用に関する保守費用です。
小さなIT環境ではどうするか
今回のケースでの代替案としては、もし数万円のNASを使う場合、エラーが発生したときにメールが担当者あてに自動送信されるように設定することや、1日1回等の頻度を決めて、NASから別のハードディスク等にバックアップされるように設定しておくことなどが挙げられます。
③コンタクトセンターでのサポート体制
どうして高額になるのか
コールを受け付けたり、監視システムで上がってきたアラートへの対処をするための、サポート部隊の体制の維持コストが発生します。日中帯だけなのか、24時間体制なのか等で費用も変わってきます。
小さなIT環境ではどうするか
今回のケースでの代替案として、もし数万円のNASを使う場合、機器トラブルがあった場合などには、通常のメーカーサポートに連絡をとることになります。通常の営業時間のみであることや、なかなかつながらないなどの不便さを、(代替策を用意して)許容できるようにしておけば、費用は抑えられます。
④駆け付けエンジニア
どうして高額なのか
オンサイト(訪問)対応をする人員の体制の維持コストが発生します。保守の一部です。連絡をとってから、どれくらいで訪問できる体制とするかによって、費用も変わってきます。
小さなIT環境ではどうするか
小さなIT環境の場合、IT作業は自分で対応する、ということが費用を抑えるポイントです。
専任のIT担当者や、ITに詳しい人がいない、ということがネックになってくるかもしれませんが、費用を抑えるためには、IT作業の内製化は重要です。
製品購入時の判断になりますが、よく売れている製品や、新しい製品を買うことで、その製品の情報がインターネットで入手しやすくなります。
また、その製品が壊れる前に、普段からバックアップをとっておくことで、修理までにかかる数日間をしのげるようにしておくことも、トラブル発生時に、すこし余裕を持てます。
その他、一般的に普及している製品であれば、トラブルが起きてからでも、IT作業として対応している業者に依頼できる可能性も高くなります。
なにかあったときに相談できる人へのつながりを持っておくことも、重要だと言えるでしょう。
費用と機能をちょうどよくするためのポイント
なにを選択して、なにを切り捨てるのか、を決めていくことになります。
まずは、必要な機器やシステムを適切なスケールで検討します。
そして、そのあとで、保守などのオプションを検討していきます。
現状と比較する
今回の例は、規模の大きさも、機能の適切さも、噛み合っていないのですが、現状と比較してどうか、なにが新たにできるようになるのかを、すり合わせていくことが必要です。
これまでに使用した経験のないものを導入する場合は、周囲に使っている人に話を聞く、あるいはインターネットで口コミ情報を確認することも重要です。
オーダーメイドのカスタマイズシステムは、当然、高額になってきますので、すでに世の中にあるものの中から検討してください。
維持費用・ランニングコストは必要最小限に
故障時の保守、監視体制、オンサイト(訪問)対応契約など、裏側で動作する機能が、必要かどうかを検討する必要があります。
メーカーの窓口にて、必要になるIT作業も、電話サポートは受けられると思いますので、IT作業は原則自分で行うことがポイントです。
バックアップ手段をもつ
その機器が故障したとき、修理までにかかる日数を、別の手段で乗り切れるのであれば、スポット修理(一時費用)で対応すればよいので、保守契約も軽くすることができます。
クラウドサービスの活用に切り替えていく
設備投資ではなく、サービス利用料なので、導入時の一時費用が抑えられます。
クラウドサービスの利用は、事業の大小を問わず、導入がすすんでいますが、小さく始めて必要に応じて拡張できること、利用停止が(設備投資に比べて)やりやすいことなど、小さな事業所にとってメリットが大きいといえます。
クラウドサービスは、お試し期間で確認する
クラウドサービスはその性質上、お試し期間が設定されていることが多いです。
そのお試し期間で実際に見て触って、使えそうかどうか、業務にあっているかどうか、確認していくことが重要です。
まとめ:小さなIT環境では、自分で対応しやすいものを使う
今回の記事は、IT見積が高額になりがちな理由と、小さなIT環境のつくり方・運用の仕方の考え方を解説しました。
要点は次のとおりです。
- 機器やシステムのスケールが、事業に合ってない
- 保守やサポートなど裏側の機能が過剰
- ITに詳しい人や専任担当者がいないので、IT作業を外部に頼まざるを得ない
費用と機能をちょうどよくするには
- 機器やシステムは現状と比較しながら検討する
- 一般的に普及しているものを使う(情報が得やすくなる)
- IT作業はできるだけ内製化する(自分でする)
- トラブル時の備えとしてバックアップや代替手段を考えておく
- クラウドサービスに切り替えていく
当記事では、ITの見積が高額になりがちな理由解説を通して、スモールオフィスにちょうどよいシステムをつくるポイントをお伝えしました。
この考え方で、小規模事業所であれ、自宅であれ、既存のものを組み合わせて使うことで、必要な環境は作ることができますので、じっくり検討してみてください。